ママたちからのSOS ~日本の社会に求められていること~
日本では、世界の中でもトップレベルの「妊娠出産を安全に迎えることができる体制」が整っています。妊産婦死亡率は、2018年で10万人に3.3人となっています。これは医学の発達と、医療現場の早期発見・迅速な対応によるものです。
しかし、増えているのは産後うつによる死亡です。
2016年以降、妊産婦における自殺が想定以上に多く発生していることが把握され、母体死亡の原因の第一位は自殺であることが明らかになっています。これらには、産後うつをはじめとした精神疾患が強く関連していることも報告されています。
うつ病は妊娠中に約10~12%、産後で約10~15%程度にみられます。
どんな人が周産期うつになりやすい?
若年妊婦/精神疾患既往歴/アルコールや薬物の乱用歴/妊娠や出産に対する不安の訴えの持続/
夫が非協力的で夫婦関係が悪い/シングルマザー/自身の周囲(家族や友人)からのサポートが乏しい/
今回の妊娠前後から出産までに経験するライフイベント(本人や家族の重篤な疾患、離婚や死別、経済的困窮など)/
流産や死産の経験/産後の重いマタニティブルーズ
ただし、上記のものとは別に、産後では育児に伴う要素として当然のように、そして常に、
・慢性的な睡眠不足
・自分1人の時間がほとんど取れないストレス
・子どもの健康を守らなければならないという精神的不安と負担
・自分自身のアイデンティティの揺らぎ(母親としての存在への移行)
などを抱えることになるのです。
つまり、特に産後の身体的・精神的な負担は相当なものであり、「誰にでも産後うつは起こりうる」と考えることが重要です。
行政では、「産前産後の切れ目ないケア」の仕組みを早急に、かつ継続的に実現をと急がれています。
しかし、実際の現場はというと、マンパワー不足や予算が取れないことなどで、ママたちのもとへ必要なサポートが届いているとはいいがたいのが現状です。
日本の社会をすぐに変えることは、難しくても 妊娠・出産・育児に一番近くで関わる助産師が まずは意識改革をしていかなければいけないと思います。
妊娠・出産をサポートする病院勤務の助産師、そこから地域の助産師にバトンタッチし、それぞれが必要ないろんな機関の専門家と協力し
母子をサポートしていく。
子どもは社会全体で守り、育てるべき存在。
最近では家庭同士の繋がりが疎遠になりがちで、どうしても「家庭内の閉鎖環境」ができやすい社会構造になっているのかもしれません。
ところが、少し前までは日本でも「みんなで子どもを育てる」という意識と文化がありました。
"It takes a village to raise a child." (一人の子どもを育てるには村中みんなのちからが必要だ。)
これはアフリカの古いことわざのようです。
国や時代は違えど、「子どもは社会の宝であり、みんな笑顔で元気に育ってほしい」と思うことが、ごく自然な文化であってほしいなと思います。
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